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ご退職のお知らせ

 

高橋和広先生(内分泌応用医科学分野)がご退職されますので、ご挨拶を頂戴いたしました。

新たに保健学科が設置された2年目の2005年に東北大学医学系研究科の分子生物学分野から保健学科の教授に就任して、19年が経ちました。皆様が入学したばかりの5月には、看護学・放射線技術科学・検査技術科学の3専攻合同の生体機能学の講義を担当してきました。細胞内外におけるカリウム濃度の大きな違いの話とともに、高カリウム血症の危険性について毎年話しました。
検査技術科学専攻では、臨床免疫学、分子生物学、臨床検査関係法規、環境・公衆衛生学実習、検査学基礎実習(免疫染色・R N A抽出とP C R)と広範囲の講義・実習を担当してきました。私の研究領域は内分泌学ですが、内分泌学の研究と臨床の成果が多くの領域に貢献できることを望んでおります。例えば、ニボルマブを始めとする免疫チェックポイント阻害薬は、メラノーマ、腎臓癌や肺癌などの癌に対して極めて有効な治療法とされています。他方、甲状腺機能亢進症や低下症、下垂体前葉炎による副腎機能低下症等の副作用が知られています。したがいまして免疫チェックポイント阻害薬による癌の治療にあたっては、内分泌系の副作用への対処は必須となっています。また、アミオダロンは、生命に危険のある再発性不整脈に有効な薬剤ですが、甲状腺機能亢進症や低下症の副作用には要注意です。
ここ3年間、Tohoku Journal of Experimental Medicine(東北ジャーナル)の編集長を務めました。東北ジャーナルは、東北帝国大学医学部によって1920年に創刊された国際的な英文総合医学雑誌であり、100年の歴史を超える稀有な存在となっています。年間800編前後の論文投稿(国内約20%、中国をはじめとする国外から約80%)があり、受理されるのは13%〜15%です。東北大学の看護学や放射線技術科学の若手研究者や、中国の看護師からも、受理しうる内容の論文の投稿をいただきました。
本年3月を最後に退職するにあたって、東北ジャーナルの2024年一月号にエジトリアルを執筆しました(図参照)。ここ数年は、新型コロナウイルス感染症が続き、ロシヤとウクライナ、ハマスとイスライルに戦争が起こり、そしてトルコ・シリアの大地震の後、能登半島では地震と津波が起こりました。多くの人々、特に戦地や災害地の若者や子供達の精神衛生の問題が懸念されます。東北ジャーナルに投稿した皆様の論文が受理され、論文が日本のみならず世界中の人々の心を支えうることを期待しております。

内分泌応用医科学分野